在留資格不正取得・営利目的在留資格不正取得助長罪裁判例

在留資格取消等取消請求事件

東京地裁平成25年12月3日判決

1.入管法22条の4第1項2号の「偽りその他不正の手段」の意義

2.在留資格取消事由が存する場合において、在留資格取消処分を行うか否かに係る

法務大臣等の裁量権

※入管法

第二十二条の4

法務大臣は、別表第一又は別表第二の上欄の在留資格をもって本邦に在留する外国人

(第六十一条の二第一項の難民の認定を受けている者を除く。)について、次の各号に掲げる

いずれかの事実が判明したときは、法務省令で定める手続により、当該外国人が現に有する在留資格

を取り消すことができる。

二 前号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等(前章第一節若しくは

第二節の規定による上陸許可の証印若しくは許可(在留資格の決定を伴うものに限る)又はこの節の規定

による許可をいい、これらが二以上ある場合には直近のものをいうものとする。以下この項において同じ。)

を受けたこと。

※判旨

1 入管法は、外国人が本邦でおこなう活動(又はその活動の基礎となる外国人が本邦において有する身分

若しくは地位)を類型化し、各類型ごとに外国人が本邦において行う活動に応じて在留資格を定め、本邦に

在留する外国人は、原則として、それぞれ、当該外国人が本邦において行おうとする活動に応じた在留資格

を取得しなければならず、当該在留資格をもって本邦に在留するものとするという在留資格制度を採用して

いるところ、本邦に在留する外国人が、虚偽の申し立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正の手段

により、上陸許可の印証等を受けた事実が判明した場合、その外国が引き続き本邦に在留することを許容する

のは、出入国管理秩序の観点からみて適当ではない。入管法22条の4第1項は、このような見地から、上記

の場合には、法務大臣は、当該外国人が現に有する在留資格を取り消すことができるとしたものである。

そして、入管法第22条の4第1項の文理及び上記趣旨に鑑みれば、同項3号の「偽りその他不正の手段」

とは、当該外国人が故意をもって行う虚偽の申し立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正行為の一切

をいうと解するのが相当であって、原告に同号に該当する事実があるというためには、原告が、故意をもって、

虚偽の申立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正行為を行うことにより、当該上陸許可の証印等

(入管法20条3項の規定による在留資格変更許可もこれに含まれる。)を受けたことを要し、かつ、それを

もって足りるべきというべきである。(「偽りその他不正の手段により」とは、犯罪かそれに準ずるような極めて

悪質かつ重大な不正手段によることを意味し、軽微なものや影響の少ない不正手段によることは含まないという

原告の主張は採用することはできない。)

2 上記1のような入管法22条の4第1項が定められた趣旨及び同項の文言に照らすと、同項各号に掲げる

事実が判明した場合に、当該外国人が現に有する在留資格を取り消すか否かは法務大臣の合理的な裁量に委ねら

れていると解されるのであって、法務大臣がした在留資格取消処分は、それが法務大臣がその裁量権の範囲を

逸脱しまたはそれを濫用した場合に限り、違法となる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です